NEW 畳楽庵
畳の未来を探る、挑戦的住宅プロジェクト — 那須・林間の家
栃木県那須の静かな林の中に、新たな実験住宅が誕生しました。
設計を手がけたのは、『チルチンびと116号』にも掲載された建築家・黒田幸弘氏と、同じく建築家である黒田りか氏。テーマは「畳の可能性を現代住宅に再定義する」。和の伝統素材である畳を全面に用いた、前例のない挑戦的な住宅です。
建物内部は、床全面を畳敷きとし、熊本・八代産の高品質いぐさ畳を中心に、幻と称される備後畳、さらに天然いぐさを用いて染色した特注畳「酒楽柿(しゅらくがき)」「利休鼠(りきゅうねず)」など、複数種の畳を部屋ごとに使い分けています。
【畳の種類について】
・八代畳:熊本県八代市で生産される国産いぐさ畳。高い耐久性と香りが特徴。
・備後畳:現在では希少な、広島県東部の備後地方で生産される伝統畳。きめ細かく美しい織りが特長。
・染色畳:「酒楽柿」は赤味を帯びた深みある色合い。「利休鼠」は落ち着きと品格を備えた灰青色。いずれも天然素材による染色。
この住宅の最大の特徴は、水廻り空間(洗面所、脱衣室など)にも畳を採用している点です。湿気に弱いとされる畳の欠点を克服すべく、床下エアコンを導入。さらにIOT家電と連動させることで、遠隔操作による室内湿度の制御を可能にしました。
内装は、漆喰仕上げの壁・天井と栃木県産材を組み合わせ、木と土の温もりを感じさせる設えに。外壁には、耐久性に優れた焼杉を使用しています。
自然と共生しながら、遊び心と先進技術を融合させた一棟。伝統と革新の狭間で、新しい住まいの形を探るプロジェクトです。
そしてこの家は、日本の住文化における“畳”の存在価値を、今一度見直し、次世代へと継承していくためのひとつの提案でもあります。
現在、着工は基礎段階。
今後の工程で、この構想がどのように立ち上がっていくのか。
「畳の家」の完成に向けた記録を、順次お届けしてまいります。
続報を、ぜひご期待ください。
